コモディティ化したサービスをムダに使うと次のビジネスが見えてくる:書評「フリー」
- 作者: クリス・アンダーソン,小林弘人,高橋則明
- 出版社/メーカー: NHK出版
- 発売日: 2009/11/21
- メディア: ハードカバー
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YouTubeやクックパッドなどのウェブサービス、フリーペーパー、無料体験コーナー、スーパーの試食コーナーなど、無料で受けられるサービスは多数あります。なぜ無料でサービスが提供できるのか、その背景にあるものは何なのか、という点を掘り下げてまとめた本。
インターネットが普及してからは特に、無料で受けられるサービスがあまりにも多く、あまりにも当たり前になってしまいました。しかし、無料サービスをマネタイズすることはとても難しいことです。フリーミアムのビジネスモデルと成り立ちを理解することは、これからのビジネスモデルを考えるにあたり必須な気もします。
本書では、潤沢に供給されるものの価値は下落し、最終的には無料になると述べています。
人々が欲するものをタダであげて、彼らがどうしても必要とするときにだけ有料で売るビジネスモデルをつくるのだ。
とのこと。無料サービスで集客して有償サービスにシフトさせるとか、広告モデルとか、フリーミアムのビジネスモデルは成功が困難であることが多いですが、コモディティ化するものは対価をとらず、希少なものでフィーを得るという考え方は納得できます。
その上で、本書ではコモディティ化による価格の低下を前提に、その活用の仕方がカギとなるとも述べています。
今日の革命者とは、新たに潤沢になったものに着目して、それをどのように浪費すればいいかを考えつく人なのだ。
例えばムーアの法則により半導体の性能は年々向上し、CPU性能はある程度ムダに使ってもコスト的に問題ないものとなりました。開発手法で言えば富豪的プログラミングが可能となったわけです。 同じように、情報や人件費など、コモディティ化し、価格がゼロに近づいたものを思い切り使うことでそれまでできなかったことができるようになります。これまでの市場を理解している人であればあるほど、かつて希少で高価だったものは大切に、節約して使ってしまう。このようなものを意図的に浪費することで、事業機会が生まれるというわけです。 コモディティ化するサービスについては、多くの人にメンタルブロックがあるとも言えそうです。
本書ではこうまとめています。
フリーと競争するには、潤沢なものを素通りしてその近くで希少なものを見つけることだ。ソフトウェアが無料なら、サポートを売る。(中略)もしも自分のスキルがソフトウェアにとって代わられたことでコモディティ化したならば、まだコモディティ化されていない上流にのぼって行って、人間が直接かかわる必要のある、より複雑な問題解決に挑めばいい。
無料に見えるサービスはコモディティ化しているものであり、思い切り浪費することで何ができるのか、または無料の周辺に「希少なもの」が眠っている可能性がないか、などと思いを巡らせてみると新たなビジネスチャンスが見えてきそうです。
多くの気づきが得られた良書でした。