論理的な視野狭窄とは:書評「精神のけもの道」
- 作者: 春日武彦,吉野朔実
- 出版社/メーカー: アスペクト
- 発売日: 2012/06
- メディア: 文庫
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おかしな人は沢山いるけれど彼らの中ではそれはおかしなことではない、というテーマについて現役精神科医が語る、人の正気と狂気の境目のようなエッセイ。
日常生活において、この人の行動原理や価値判断は理解できないな、ということはたまにあります。特に親戚縁者など親しい関係の人の行動などは、細かいことでも気になるものです。 多くの人が「理解できない」と感じる行動は奇行といえるけども、そこまでは言えなくても首を傾げたくなる行動をとる人は多い。
例えば、徹底的に部屋を綺麗にしないと気がすまない、ジンクスとして毎回何かをしないと気がすまない、壁な顔で嘘をつく、会うたびに毎回同じ話を繰り返すといったあたりです。
本書では、人間が焦りから視野狭窄に陥り過剰な行動をとってしまう心の動きについて、軽妙な語り口で事例が挙げられています。
あとがき対談によると、「精神のけもの道」とは
人間というのはどんなに頭が病気でも変なやつでも、基本的に論理的なのだと思っています。といっても、本人にとって論理的なだけで、ぜんぜん現実には通用しないんです。(中略)無意味に過剰なだけ。そんなとき、人は、「精神のけもの道」を歩いて行くという理解で書いていきました。
という定義なのだとか。興味深いです。
人のこだわりや癖がどこに起因するのか、ということに思いを巡らせると、もっと人に優しくできるようになるかもしれません。そんなことを思わせてくれた一冊。
伝説の漫画家、吉野朔実のエッセイ漫画も収録されておりお得な本でした。